損益通算とは?できる所得とできない所得を初心者向け解説

損益通算とは、ある所得で発生した損失を、他の所得の利益から差し引いて、課税対象となる所得を計算する仕組みのことです。

簡単に言えば、「黒字の所得」と「赤字の所得」を一定の範囲で相殺する制度です。

ただし、すべての損失を自由に相殺できるわけではなく、損益通算できる所得の種類や範囲は税法上決められています。

この記事でわかること

  • 損益通算の意味
  • 損益通算できる所得・できない所得
  • 総合課税・分離課税との関係
  • 株式・国内FX・海外FX・暗号資産との違い
  • 初心者向け注意点

損益通算とは?

損益通算とは、一定の所得で生じた赤字を、他の所得の黒字から差し引くことです。

たとえば、事業所得で赤字が出た場合、その赤字を給与所得などの黒字と一定条件のもとで相殺できる場合があります。

その結果、課税対象となる所得が少なくなり、税負担が軽くなることがあります。

損益通算の読み方

損益通算は、「そんえきつうさん」と読みます。

英語では、Profit and Loss OffsetやOffsetting Gains and Lossesなどと説明されることがあります。

税金や投資の分野では、損失を利益と相殺できるかどうかを考えるときに使われます。

損益通算の基本

項目内容
名称損益通算
読み方そんえきつうさん
意味一定の損失を他の所得の利益から差し引くこと
主な目的所得全体の実態に近い形で税額を計算すること
対象となる主な所得不動産所得、事業所得、譲渡所得、山林所得
関連用語総合課税、分離課税、雑所得、損失繰越、確定申告

損益通算は、税金計算において「損失をどこまで利益と相殺できるか」を考える重要な仕組みです。

損益通算の簡単な例

所得の種類金額
給与所得500万円
事業所得の赤字-100万円
損益通算後の所得400万円

このように、損益通算が認められる場合は、赤字を黒字から差し引いて所得を計算できます。

損益通算できる所得

国税庁では、損益通算の対象となる所得として、不動産所得、事業所得、譲渡所得、山林所得を挙げています。

所得の種類内容
不動産所得不動産賃貸などから生じる所得
事業所得個人事業やフリーランスの事業から生じる所得
譲渡所得資産を売却したことによる所得
山林所得山林を伐採・譲渡したことによる所得

ただし、これらの所得であっても、損益通算できない例外があるため注意が必要です。

損益通算できない所得

配当所得、給与所得、一時所得、雑所得で損失が出た場合、その損失は原則として他の所得から控除できません。国税庁も、雑所得の金額の計算上生じた損失は、他の所得の金額と損益通算できないと説明しています。

所得の種類損益通算の扱い
給与所得通常、損失が発生する所得ではない
配当所得損失が出ても他の所得と通算できない
一時所得損失が出ても他の所得と通算できない
雑所得損失が出ても他の所得と通算できない

特に海外FXや暗号資産の利益・損失は雑所得として扱われる場合が多いため、損益通算の可否に注意が必要です。

総合課税とは?

総合課税とは、給与所得、事業所得、不動産所得、雑所得などを合計して税額を計算する課税方式です。

総合課税では、一定の所得について損益通算が認められる場合があります。

ただし、同じ総合課税の中でも、雑所得の赤字は他の所得と損益通算できません。

分離課税とは?

分離課税とは、特定の所得を他の所得と分けて税額計算する課税方式です。

株式の譲渡所得、土地建物の譲渡所得、一定の先物取引による雑所得等などは、分離課税の対象になる場合があります。

分離課税では、同じ区分内でのみ損益通算できるケースが多く、他の所得と自由に相殺できるわけではありません。

損益通算と総合課税・分離課税の違い

用語意味
総合課税複数の所得を合算して税額を計算する方式
分離課税特定の所得を他の所得と分けて税額計算する方式
損益通算一定の損失を他の利益から差し引く仕組み

総合課税や分離課税は税額計算の方式で、損益通算は損失と利益を相殺する仕組みです。

損益通算と株式投資の関係

株式投資では、上場株式等の譲渡損失を、同じ上場株式等の譲渡益や一定の配当所得と損益通算できる場合があります。

ただし、株式の損失を給与所得や事業所得などと自由に相殺できるわけではありません。

株式は株式の区分内で損益通算を考える必要があります。

損益通算と国内FXの関係

国内FXの利益は、一般的に「先物取引に係る雑所得等」として申告分離課税の対象になります。

国内FXで損失が出た場合、商品先物や取引所CFDなど、同じ「先物取引に係る雑所得等」の範囲で損益通算できる場合があります。

ただし、給与所得、事業所得、株式譲渡益、海外FXの雑所得などとは自由に通算できません。

損益通算と先物取引の関係

一定の先物取引に係る雑所得等で損失が出た場合、同じ区分の利益と損益通算できる場合があります。

さらに、通算しても控除しきれない損失については、一定の要件を満たして確定申告を行うことで、翌年以後3年間にわたり繰り越せる制度があります。

ただし、この繰越控除は同じ「先物取引に係る雑所得等」の範囲で使う制度です。

損益通算と海外FXの関係

海外FXの利益は、一般的に総合課税の雑所得として扱われる場合が多いです。

雑所得で損失が出ても、国税庁は他の所得と損益通算できないと説明しています。

そのため、海外FXの赤字を給与所得や事業所得の黒字から差し引くことは原則としてできません。

国内FXと海外FXの損益通算の違い

取引課税区分の例損益通算の考え方
国内FX先物取引に係る雑所得等同じ先物取引等の区分内で通算できる場合がある
海外FX総合課税の雑所得となる場合が多い他の所得とは原則として損益通算できない
株式投資上場株式等の譲渡所得等株式等の区分内で通算できる場合がある

同じ投資でも、国内FX・海外FX・株式では損益通算の範囲が異なります。

損益通算と暗号資産の関係

暗号資産の売買益は、現行では原則として総合課税の雑所得として扱われます。

暗号資産取引で損失が出ても、給与所得や事業所得など他の所得と損益通算することは原則としてできません。

暗号資産の損失は、同じ雑所得内で利益と相殺できる場合はありますが、他の所得区分とは分けて考える必要があります。

損益通算と雑所得の関係

雑所得とは、給与所得、事業所得、不動産所得など、他の所得区分に該当しない所得です。

雑所得の金額の計算上生じた損失は、他の所得と損益通算できません。

海外FX、暗号資産、副業収入の一部などは雑所得として扱われる場合があるため、赤字の扱いに注意が必要です。

損益通算と事業所得の関係

事業所得で赤字が出た場合、一定の条件のもとで給与所得など他の所得と損益通算できる場合があります。

ただし、副業収入が事業所得ではなく雑所得と判断されると、その赤字は他の所得と通算できません。

事業所得か雑所得かの判断は、継続性、規模、帳簿管理、独立性などを踏まえて慎重に行う必要があります。

損益通算と不動産所得の関係

不動産所得で赤字が出た場合、一定の範囲で給与所得や事業所得などと損益通算できる場合があります。

ただし、不動産所得の赤字のうち、土地取得に要した借入金の利子に相当する部分などは損益通算できない場合があります。

不動産投資では、赤字なら必ず損益通算できるとは限らない点に注意が必要です。

損益通算と譲渡所得の関係

譲渡所得とは、資産を売却したことによる所得です。

譲渡所得の損失は、資産の種類によって損益通算できる場合とできない場合があります。

生活に通常必要でない資産の譲渡損失などは、損益通算の対象外になる場合があります。

損益通算と損失繰越の違い

用語意味
損益通算同じ年の利益と損失を一定範囲で相殺すること
損失繰越その年に控除しきれなかった損失を翌年以降に繰り越すこと

損益通算は同じ年の相殺、損失繰越は翌年以降への持ち越しと考えると分かりやすいです。

損益通算と損失繰越の例

内容扱い
1年目国内FXで100万円の損失要件を満たせば翌年以後3年間繰越可能
2年目国内FXで60万円の利益繰越損失と相殺できる場合がある
3年目国内FXで40万円の利益残りの損失と相殺できる場合がある

一定の先物取引に係る雑所得等では、確定申告を行うことで損失の繰越控除が使える場合があります。

損益通算のメリット

税負担を抑えられる場合がある

利益と損失を相殺できるため、課税対象となる所得を減らせる場合があります。

所得の実態に近い税額計算ができる

黒字と赤字を考慮することで、実際の収支に近い形で税額を計算できます。

投資や事業のリスク管理に役立つ

損失が出た場合の税務上の扱いを理解することで、取引や事業計画を立てやすくなります。

損益通算のデメリット

すべての損失が対象ではない

損益通算できる所得は限られており、雑所得の損失は他の所得と通算できません。

区分ごとのルールが複雑

株式、国内FX、海外FX、暗号資産、不動産などで損益通算の範囲が異なります。

確定申告が必要になる場合がある

損益通算や損失繰越を使うには、確定申告が必要になることがあります。

損益通算の主なリスク

リスク内容
所得区分の誤り事業所得・雑所得・分離課税の区分を間違えるリスク
通算範囲の誤解自由に相殺できると思い込むリスク
申告漏れリスク損益通算や繰越控除に必要な申告を忘れるリスク
海外FXの誤解海外FXの損失を給与所得と相殺できると誤解するリスク
税制改正リスク税制変更により扱いが変わるリスク

損益通算は便利な制度ですが、所得区分を誤ると申告ミスにつながります。

損益通算で初心者が注意すべきこと

雑所得の損失は他の所得と通算できない

海外FXや暗号資産の損失は、給与所得などと相殺できない場合が多いです。

国内FXと海外FXを混同しない

国内FXは申告分離課税の先物取引等、海外FXは総合課税の雑所得として扱われる場合が多く、損益通算の範囲が異なります。

株式とFXは基本的に別区分

株式の損失と国内FXの利益を自由に相殺することはできません。

損失繰越には確定申告が必要

損失を翌年以降に繰り越すには、要件を満たしたうえで確定申告が必要です。

最新情報を確認する

税制は変更される可能性があるため、最新の国税庁情報や税理士への確認が大切です。

損益通算が関係する人

損益通算は、以下のような人が理解しておきたい仕組みです。

  • 個人事業主やフリーランス
  • 不動産所得がある人
  • 株式投資をしている人
  • 国内FXをしている人
  • 海外FXや暗号資産で損益がある人

利益と損失の扱いは所得区分によって変わるため、投資や副業をしている人ほど重要です。

損益通算を軽視しやすい人の注意点

次のような人は、損益通算の扱いを誤解しやすいため注意が必要です。

  • 赤字なら何でも給与所得と相殺できると思っている人
  • 海外FXと国内FXを同じ税制だと思っている人
  • 暗号資産の損失を他の所得と通算できると思っている人
  • 株式とFXの損益を自由に相殺できると思っている人
  • 確定申告をしなくても損失繰越できると思っている人

損益通算は「赤字なら何でも相殺できる制度」ではありません。

損益通算を見るときの基本手順

所得の種類を確認する

まず、損失が出た所得が事業所得、不動産所得、雑所得、譲渡所得など、どの区分に該当するか確認します。

損益通算できる所得か確認する

その損失が、他の所得と通算できる対象か確認します。

同じ区分内で通算できるか確認する

株式や国内FXのように、同じ分離課税区分内でのみ通算できるケースがあります。

損失繰越できるか確認する

控除しきれない損失がある場合、翌年以降に繰り越せるか確認します。

確定申告の要否を確認する

損益通算や損失繰越を使う場合、確定申告が必要になることがあります。

損益通算の注意点

損益通算とは、一定の所得で発生した損失を、他の所得の利益から差し引く仕組みです。

ただし、損益通算できる所得は限られており、国税庁では不動産所得、事業所得、譲渡所得、山林所得を対象として挙げています。

また、雑所得の損失は他の所得と損益通算できません。

初心者は、損益通算を「利益と損失を相殺する仕組み」として理解しつつ、所得区分ごとのルールを必ず確認することが大切です。

よくある質問

損益通算とは簡単に言うと何ですか?

一定の所得で出た損失を、他の所得の利益から差し引いて税金を計算する仕組みです。

損益通算は何と読みますか?

「そんえきつうさん」と読みます。

損益通算できる所得は何ですか?

主に不動産所得、事業所得、譲渡所得、山林所得の損失が対象になります。ただし例外もあります。

雑所得の損失は損益通算できますか?

原則としてできません。国税庁は、雑所得の損失は他の所得と損益通算できないと説明しています。

国内FXの損失は損益通算できますか?

国内FXは、同じ「先物取引に係る雑所得等」の区分内で損益通算できる場合があります。ただし、給与所得や株式譲渡益とは通算できません。

海外FXの損失は給与所得と損益通算できますか?

原則としてできません。海外FXは総合課税の雑所得として扱われる場合が多く、雑所得の損失は他の所得と通算できないためです。

損益通算と損失繰越の違いは何ですか?

損益通算は同じ年の利益と損失を相殺すること、損失繰越は控除しきれなかった損失を翌年以降に持ち越すことです。

まとめ

損益通算とは、一定の所得で発生した損失を、他の所得の利益から差し引いて税額を計算する仕組みです。

国税庁では、損益通算の対象となる所得として、不動産所得、事業所得、譲渡所得、山林所得を挙げています。

一方で、雑所得の損失は他の所得と損益通算できません。

投資では、株式、国内FX、海外FX、暗号資産によって損益通算の範囲が異なります。国内FXは同じ先物取引等の区分内で通算できる場合がありますが、海外FXや暗号資産は雑所得として扱われる場合が多く、他の所得とは原則として通算できません。

初心者は、損益通算を「赤字と黒字を相殺する制度」として理解しつつ、どの所得区分に該当するのか、同じ区分内で通算できるのか、損失繰越が使えるのかを確認するようにしましょう。

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