―派手な宣伝の裏に隠された構造を知らないと、EA選びは必ず失敗する―
最近では「完全放置で稼げる」「月利30%以上」「勝率99%」といった刺激的な言葉を掲げた有料EA(自動売買ソフト)が、SNSやYouTube、ブログなどあらゆる場所で売られています。忙しい人でも楽に稼げる、チャートを見ずに資産が増える、投資経験がなくても勝てる——こうした夢のようなフレーズに心を動かされてEAを購入した人は少なくないはずです。そして、もしあなたが一度でも「買ったEAが思っていたのと違う」と感じたことがあるなら、その裏側には必ず“構造的な理由”が存在しています。
結論からいえば、EAが悪いのではありません。
ただし「EA販売というビジネスの仕組み」を理解していないまま、宣伝文句をそのまま信じて購入する行為が危険なのです。ここを理解しない限り、あなたは何度EAを買い替えても、同じ失敗を繰り返すことになります。
宣伝文句が派手になる理由は、利益構造が“販売側”にあるから
EAの売り文句に派手な数字が並ぶのは、開発者が嘘つきだからではありません。「販売しないと利益にならない」というシンプルな構造があるため、どうしても訴求力の高い表現にならざるを得ないのです。
もし本当に月利30%を安定して出し続けるEAが存在するなら、開発者は販売などせず、自分や少数の仲間だけで運用して莫大な資産を築くでしょう。販売するということは「多くの人に広めても問題ないロジック」ということであり、その時点で“永久に勝ち続けられる手法ではない”可能性が高くなります。
現実として、EA販売ページに並ぶ華やかな実績は「売るために整えられたもの」と考えておくほうが安全です。
バックテストは“未来”を保証しない—むしろ完璧すぎるほど危ない
ほとんどのEA販売ページには、美しい右肩上がりのバックテストが載っています。10年間負けなし、月利10%以上、ドローダウン極小……。しかし、バックテストの美しさほど信用してはいけません。
なぜならバックテストとは「過去のチャートに合わせて最適化する」ことで、いくらでも結果を良くできるからです。単純に言えば、過去の相場に“合わせすぎたEA”は、少し相場が変わるだけで簡単に壊れてしまいます。さらに、バックテストにはスリッページや約定拒否が反映されないため、リアル運用では全く違う動きをすることがあります。
バックテストが完璧なEAほど、未来での再現性は低い。
これは多くのトレーダーが経験的に知っている真理です。
特定の相場では強いが、別の相場で一撃死するEAは多い
EAには“得意な相場”“苦手な相場”が必ず存在します。例えば、レンジ相場に強いEAは、トレンドが発生した瞬間に大損失を出すことがあります。逆張りEAは小さく勝ち続けるものの、急激な値動きで一気に破綻します。ナンピンやマーチンゲールを内蔵したEAは「勝ち続けているように見えて、実際には“破滅までのカウントダウン”が密かに進んでいる」ことも珍しくありません。
EAが相場に柔軟に対応できると思っている人は多いですが、実際には“機械だからこそ柔軟に対応できない”のです。想定外の相場展開が来たとき、EAは軌道修正せず、設定されたロジックどおりに突撃し続けます。その結果、裁量トレーダーであれば回避できた局面で壊滅することがあります。
EAの価値は「使っている人の数」に反比例する
EAは広まるほど弱くなる——これは意外と知られていない、しかし非常に重要なポイントです。
多くのユーザーが同じロジックで同じようなタイミングでエントリーすると、スリッページが発生しやすくなり、利確ポイントには届きにくくなり、損切りラインにオーダーが集中することで“狩られやすいロジック”へと変化していきます。
つまり、EAは“みんなが使えば使うほど負けやすくなる”という宿命を背負っています。
だからこそ、本当に使えるEAはそもそも売られませんし、大量販売されるEAは最初から寿命が短いのです。
ロジック非公開は「すごい秘密があるから」ではなく、「説明すると売れないから」
EAの販売では「ロジック非公開」がよく使われています。
理由には“企業秘密”“独自技術”といったもっともらしい表現が並びますが、実際には「シンプルすぎる」「危険なロジックで批判される」という理由で公開しない場合が多いのです。
多くの非公開ロジックは、ふたを開けると
- ナンピン
- マーチン
- 逆張りのロット増し
- トラップ式の小利大損型
- 損切りを後ろにずらすだけ
といった“典型的な危険アルゴ”であることが珍しくありません。
ロジックを公開すれば玄人が一瞬で見破ってしまいます。だから非公開にするしかないのです。
無料EAでも十分勝てるのに、なぜ高額EAを買ってしまうのか?
最近は無料で提供されている優秀なEAも増えています。それでも高額EAを買ってしまう理由は、購入者が「ラクして稼ぎたい」という心理を持っているからです。
販売者はそこを巧妙に突いてきます。“自動で稼ぐ”“仕事を辞められる”“初心者でも月利20%”“完全放置で不労所得”——こうした言葉は、疲れた現代人の心に刺さるよう緻密に設計されています。
つまりEA販売には「商品力」だけでなく「心理操作」という側面があるということです。
EAを否定する必要はない—ただし“買って放置”が一番危険
ここまで読むとEAは危険だと思ったかもしれませんが、実はEAは正しく使えば非常に強力な武器になります。裁量では絶対にできない24時間稼働、ルールどおりの機械的トレード、感情の排除というメリットは、トレーダーの武器としては大きいものです。
問題は、「何も理解しないままEAを信じて丸投げする」という使い方です。
EAは車のようなものです。
性能がどれだけ優れていても、運転する側が仕組みを理解していなければ事故を起こします。
EAが勝つためには、
- どんな相場が得意なのか
- どんな相場で壊れるのか
- どんなロジックなのか
- 破綻ラインはどこか
- どの局面で運用停止すべきか
- どの程度ボラティリティを許容できるか
といった“理解”が必要です。
理解して使えばEAはあなたの武器になります。
理解しないまま使えば破綻に直行します。
結論:EAの謳い文句は「参考程度」にとどめ、自分の頭で判断すべき
EAの宣伝文句をそのまま信じる必要はありません。
しかし、EAそのものを否定する必要もありません。
大切なのは、“宣伝”と“現実”を切り離して考える冷静な視点を持つことです。
EAの価値は「ロジックの中身」ではなく、あなた自身がそのEAをどう扱うかで決まります。
- 過剰な期待をしない
- 販売実績ではなく仕組みを見る
- ロジックの得意と弱点を理解する
- バックテストよりフォワードを重視する
- 危険な挙動が出たら停止する判断力を持つ
こうした姿勢さえあれば、あなたはEA市場の“罠”に巻き込まれることなく、むしろEAを強力な味方に変えることもできます。
EAの宣伝をそのまま信じて購入している限り、あなたは販売側の思惑に振り回され続けます。
しかし、一歩引いて冷静に分析できるようになった瞬間、あなたは“EAで負ける側”から“EAを使いこなす側”へと移行できます。


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