はじめに:負けを取り返したい気持ちが、さらなる損失を呼ぶ

FXトレードで連敗が続いたあと、「このままでは終われない」「次で取り返す!」
そう思ってロットを上げたり、根拠の薄いエントリーをしてしまった経験はありませんか?

この“取り返したい”という感情は、誰もが持つ自然な心理です。
しかし、それこそが最も危険なメンタルトラップでもあります。

トレードで本当に怖いのは、「損失」ではなく「焦り」です。
焦りは冷静な判断を奪い、普段のトレードルールを一瞬で崩壊させます。
この記事では、連敗後に訪れる“報復トレード”の心理構造を明らかにし、そこから抜け出す具体的なステップを解説します。

第1章:連敗後に人が冷静さを失う理由 ― 「報復バイアス」とは?

連敗後に無理なエントリーをしてしまう原因は、心理学的に言えば報復バイアス(Revenge Bias)と呼ばれるものです。

これは、自分が受けたダメージ(損失)を「すぐに帳消しにしたい」という欲求。
脳が“損”を受け入れられず、短期間で均衡を取り戻そうとする防衛反応です。

例えば、カジノやギャンブルで負けた人が「あと一回で取り返せる」と賭け金を増やすのも同じ現象です。
このとき脳内では「ドーパミン(快楽物質)」が強く分泌され、理性を麻痺させます。

つまり、連敗後のトレーダーは「勝ちたい」のではなく、“負けを認めたくない自分”と戦っているのです。
これが報復トレードの本質です。

第2章:実体験 ― 取り返そうとして更に資金を減らした夜

私もかつて、この報復バイアスに支配されていました。
ある日、3連敗を喫し、頭の中は「取り返さなきゃ」でいっぱい。
冷静な判断ができないまま、普段の5倍のロットでエントリーしました。

その瞬間、心拍数は上がり、チャートの一つ一つの動きに神経が反応しました。
「頼む、今度こそ上がってくれ…」

しかし現実は無情で、相場は逆行。
いつもなら設定している損切りラインも無視してしまいました。
結果、数分で口座資金の40%を失いました。

チャートを閉じ、ただ呆然と座り込む自分。
そのときようやく気づきました。
私は「相場」ではなく、「自分の感情」と戦っていたのだと。

第3章:焦りの心理を分解する ― 「3つの感情」が暴走を生む

連敗後に焦って行動してしまう背景には、以下の3つの感情が複雑に絡んでいます。

① 恥の感情(自尊心の崩壊)

「負けた自分を認めたくない」という感情。
トレードを“プライドの競技”として見ている人ほど、損失を個人的な敗北と感じやすいです。

② 恐怖(資金を失う不安)

「このまま負け続けたらどうしよう」という不安が、逆にリスクを取りすぎる行動を引き起こします。
心理学的には*損失回避性によるリスク追求行動”と呼ばれます。

③ 焦燥(早く楽になりたい)

連敗によるストレスを「勝ちで上書きしたい」という欲求。
一種の現実逃避であり、冷静さを奪う最も危険な感情です。

この3つが同時に動くと、トレーダーは“自分ではない誰か”のように行動します。
判断力が落ち、手が勝手にマウスをクリックしている──そんな状態になります。

第4章:報復トレードを防ぐための5つの実践ステップ

焦りの感情は、理屈では抑えられません。
重要なのは、「行動で断ち切る習慣」を持つことです。

ステップ①:連敗したら、即「取引日記」を書く

負けた直後の感情を記録することで、冷静さを取り戻すスイッチになります。
「なぜ負けたか」よりも、「どんな気持ちだったか」を書くことが大切です。

ステップ②:連敗ルールを“自動化”する

「3連敗したら自動的にPCを閉じる」「連続損失3回でMT5を終了」など、
自分で操作できない“物理的ルール”を設けると、感情の暴走を防げます。

ステップ③:1日の損失上限を金額で設定

「−3万円を超えたらその日は終了」など、ルールを数値化することで客観的に判断できます。
数字は感情を中和する最強の武器です。

ステップ④:勝ちトレードの復習をしない

連敗後は「以前の勝ち方を再現しよう」としますが、それが焦りを呼びます。
勝ちパターンは一旦忘れ、**「負けた時の心の動き」**だけに注目しましょう。

ステップ⑤:負けを“トレーニング費用”として明確に定義する

「今月の練習コストは3万円まで」と最初から決めておくと、負けが目的外支出ではなく“計画内”になります。
これにより罪悪感が減り、メンタルを保ったまま継続できます。

第5章:焦りをリセットする「感情リカバリー法」

連敗した日は、無理にポジションを取らず“心のクールダウン時間”を作りましょう。
おすすめは以下の3つです。

15分間、画面を完全に閉じる

チャートを見るだけでストレスが再燃します。完全に離れることが最優先です。

損失を声に出して受け入れる

「今日は−2万円、でも明日はまだ資金が残っている」と声に出すことで、脳が“現実を受け入れる”モードに切り替わります。

意図的に別の成功体験を積む

掃除、筋トレ、料理など、“自分をコントロールできた行動”をすぐ行うと、自信の回復が早まります。
これは心理学でいう「セルフエフィカシー回復法」です。

第6章:焦りを超えると、トレードは静かになる

報復トレードをやめられるようになると、チャートを見る時間が減ります。
その代わりに、待つ力が身につきます。

冷静にチャンスを待てるトレーダーほど、損失よりも「時間」を大切にするようになります。
そして、焦らなくなった瞬間から、トレード結果は自然と安定していきます。

相場は逃げません。
あなたが焦る必要もありません。
一度冷静さを取り戻せば、相場はまた必ずあなたにチャンスをくれます。

まとめ:焦りを捨てることが、勝ち続ける唯一の条件

トレードで失敗する人の多くは「知識不足」ではなく「焦りの制御不足」です。
連敗しても、焦らず、休める人だけが生き残ります。

焦りを抑えるとは、自分の感情と距離を取ること。
そしてその第一歩は、「取り返そう」という思考を手放す勇気です。

負けは恥ではありません。
焦らず、冷静に、次を見据える力こそが本当の強さです。
トレードの勝敗よりも、あなたのメンタルが整っているかどうかが、最終的な“勝ち負け”を決めるのです。

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