
「FXはロスカットさえされなければ負けない」。
この考え方は、多くのトレーダーが一度は耳にしたことがある“半分正しく、半分危険な言葉”です。
確かに、証拠金が十分にあり、ロスカットが発動しない限り、含み損は「確定損失」ではありません。相場がいつか戻ってくれば損失はゼロになり、逆に利益へ転じる可能性もある——。
こうした構造がFXの特徴であり、「ロスカットにさえならなければ負けない」という考えが生まれる理由でもあります。
しかし、この言葉の背景には、知っておくべき前提条件とリスク、そして戦略が存在します。本記事では、その“理論”の成り立ちから、現実的な注意点まで、初心者にもわかりやすく解説していきます。
FXで損失が「確定」するのはロスカットか手動決済のときだけ
FXの損益は、
- ポジションを決済したとき
- もしくはロスカットが執行されたとき
に確定します。
つまり、どれだけ含み損が広がっていても、ロスカットにさえならなければ、損失は確定しません。
特に海外FXではゼロカットや高レバレッジが一般的で、証拠金ギリギリでポジションを持ちすぎない限り、即ロスカットということは避けやすい環境にあります。
為替相場は「上がり続ける通貨も、下がり続ける通貨もない」という性質があり、長期で見ればレンジ相場(行ったり来たり)になりやすい特徴があります。そのため、多くの通貨ペアはいつか元のレート付近に戻ってくるケースも少なくありません。
この性質こそが、「ロスカットさえされなければ負けない」という考えの根拠です。
理論上は正しい——しかし“事実上の破綻ポイント”がある
とはいえ、ここからが重要です。
“ロスカットされなければ負けない”はあくまで 理論上の話 であり、現実には次のようなリスクが存在します。
① 資金が有限である以上、含み損には耐えられないときが来る
FX口座に無限の資金を入金できる人は存在しません。
どれほど小さくエントリーしたとしても、相場が“想定外”に大きく動けば、含み損は膨らみ続けます。
長期的なトレンドは何年も継続することがあります。
- 日本の円安トレンド(数年間上がり続けた)
- ユーロやポンドの長期下落トレンド
など、歴史を見れば「戻らない相場」は普通にあります。
資金が有限である以上、耐えられなくなるポイントが必ず訪れます。
② ロスカットは価格変動で“瞬間的に”到達することがある
為替は24時間動く市場であり、経済指標や戦争、要人発言などで数十〜数百pipsが一瞬で動くことがあります。
この急変動では、
- 証拠金を追加する時間がない
- 気付いたら強制ロスカットが執行された
ということは、珍しくありません。
つまり、理論上は耐えられる想定だったとしても、事実上は「瞬間的な急変動」で強制決済される可能性があります。
③ スワップ(マイナススワップ)が資金を日々削る
長期保有で最も見落とされがちなポイントが、
マイナススワップによる資金減少 です。
例えば、
- USD/JPYの売り
- AUD/JPYの売り
など、高金利通貨を売るポジションは毎日スワップが発生します。
相場が戻るのを“数ヶ月~数年”と待つ間に、スワップだけで数十万円〜数百万円が減り、耐えられる資金が削られ、結局ロスカットされる…という結末はよくある話です。
それでも「ロスカットさえなければ負けない」が一定の合理性を持つ理由
多くのトレーダーがこの言葉に魅力を感じる理由は、相場が反転しやすい特徴を活かした戦略が存在するからです。
① 為替は長期的に“行ったり来たり”するレンジ性が高い
株のようにゼロになることはなく、国の価値そのものが変動するため、上がるときもあれば下がるときもあるという特性があります。
そのため、短期的に含み損になっても、長期的には戻ってくるケースが他の金融商品より多いのは事実です。
② ナンピンや分割エントリーと相性が良い
相場が落ちたら買い、上がったら売る——
レンジ相場で特に有効なナンピン手法は、“ロスカットにならない限り負けにくい”という理屈が成立する戦略です。
ただし、無制限にナンピンできるわけではないため、資金管理がすべてと言っても過言ではありません。
③ 海外FXのゼロカットでリスクは限定しやすい
海外FXでは、口座残高がマイナスになってもゼロにリセットされる「ゼロカット」が主流です。
これによって、負債を抱えるリスクがないという特性が生まれ、より“ロスカットさえされなければ負けない”という理屈が現実味を帯びます。
実際にこの理論を活かすための3つのポイント
理論を現実に落とし込むには、次の3点が不可欠です。
① ロットを極限まで下げる
FXの失敗の9割はロット管理です。
資金に対して小さすぎるほどのロットで運用すれば、含み損に長期間耐えられます。
目安としては、資金100万円なら0.01〜0.03Lot程度が長期保有向きというケースも珍しくありません。
② 通貨ペアの特性を理解して選ぶ
トレンドが強い通貨を売り・買いするのは危険です。
例えば、
- USD/JPYは長期上昇しやすい
- AUD/JPYは金利差で売りスワップが重い
- ユーロは政治要因で崩れやすい
など、それぞれ特性があります。
「戻る可能性が高い通貨」を選ぶことが不可欠です。
③ スワップの影響を必ず計算しておく
長期間持つ前提なら、マイナススワップ=日々かかるコストとして理解しておく必要があります。
1日数百円でも、1ヶ月で1万円、半年で6万円以上になります。
スワップが積み重なることでロスカットラインが近づくため、“戻る前に資金が尽きる”という事故を防ぐ必要があります。
結論:「ロスカットさえされなければ負けない」は真実だが、誤解しないこと
FXの損失が確定するのはロスカットか決済したときだけ。
だから、ロスカットにならなければ理論上負けない——。
これは 構造上は正しい 考え方です。
しかし同時に、ロスカットを回避することは簡単ではないという現実も理解しておく必要があります。
- 通貨の長期トレンド
- マイナススワップの蓄積
- 資金の有限性
- 急激な相場変動
- 証拠金維持率の低下
これらを乗りこなせなければ、理論は理論のままで終わります。
反対に、適切な資金管理・ロット管理・通貨選びさえ徹底すれば、この理論は大きなメリットをもたらす可能性があります。
この記事のまとめ
- 含み損はロスカットか決済するまで確定しない
- そのため“理論上は”ロスカットさえ回避すれば負けない
- しかし現実にはマイナススワップ・長期トレンド・急変動が大きな壁
- 低ロット・通貨選び・スワップ計算が必須
- 理論は正しいが、実践には高度なリスク管理が必要














